今日は何をしたいですか?

HⅮR-S(長谷川式簡易知能評価スケール)は、

精神科医の長谷川和夫氏が開発した認知症判断に使われる

認知機能テストの一つです。

そのHⅮR-Sを開発した長谷川和夫氏は90歳となりましたが

2017年秋、自ら認知症であることを公表しています。

そしてケアマネの勧めで週1回、デイサービスへ通っているそうです。

 

今、『おはよう21(中央法規)』という月刊誌で本氏の連載をして

いて、その中で書いてあることが大切だな~と思ったので

シェアさせてもらいます。

 

「1日の始まりには、『今日は何をしたいですか?』

と聞いてもらいたい。朝起きてから、

今日はこれをしようあれはしたくないとか、

頭の中であれこれ考えていたのに、

急にその日の予定を言われると、

言われたことだけが頭に入ってきて、

自分の考えがどこかに行ってしまうんです。

(デイサービスでは)親切心から今日の予定を

教えてくれているのでしょうし、

自分でも考えていたことを否定されたとはなかなか自覚

できないのですが、このやりとりでは選択の余地がない。

相手の立場に立ったケアには、何がしたいのか、

何がしたくないのかを教えてもらうこと、「本人に選択を

してもらうことが非常に大切です。選択肢のないやりとりは、

相手の気持ちを尊重しているとはいえないですよね。」

と書いてありました。

 

 私が特養に居た頃、入院していた方が、退院することになり

仲の良かった利用者さんと一緒にその利用者さんの大好物

シシャモを買ってきて私と利用者さん達で

ししゃもパーティをしようと盛り上がったのですが、

介護さんからは「僕たちは分刻みで仕事してるんです。

そんなことしてる暇はありません。」

と冷たく言われました。

それで私と利用者さんたちだけでししゃもパーティを

開催しましたが、看護師や介護さん達との

壁を感じてしまいました。

 

施設では必ず日課があり、その日課に沿って業務をすることに

なっています。

起床介助したら排泄介助、水分補給。

そのあとは食堂にお連れして

食事介助、また水分補給。

服薬介助のあとはまた居室にお連れして就寝介助、

確かに介護さん達は多忙です。

 

「今日は何をしたいですか?」なんて

聞いている暇はないと言えば、そうなのかなとも

思いますが、その毎日の繰り返しが

利用者さんを重度化させていくのではないのかな

と思います。

ケアプランにも日課表があり、それに沿って

動いているのです。

 

しかし、毎日毎日が同じことの繰り返しって

人間的といえるのでしょうか?

 

今日は天気が良いから、ドライブでも行こうか?

雨が降っているから大人しく家で本でも読んでいようか?

たまに遊園地や温泉に行こうか、居酒屋でちょいと

羽目を外そうか?

 

そんなことがしたくて、私は昭ちゃん家を

始めました。

 

去年、利用者のお迎えに行った時に

「このまま昭ちゃん家に行かないで、天気が良いから

どこかドライブへ行こう!」と言われて

支笏湖までドライブに行ってきました。

 

昭ちゃん家は利用者さんに振り回されて

なんぼ、だと思います。

 

「今日は何がしたいですか?」と聞いても

「わからないわ。」と戸惑うお年寄りのほうが多いと思います。

「日課があるデイのほうが良い」と他のデイに移られた方も

いらっしゃいました。

 

それでも昭ちゃん家は

「今日は何がしたいですか?」と聞くことができる

利用者さんの心に寄り添う宅老所でありたいと思います。