2020/01/01
明けましておめでとうございます。
宅老所昭ちゃん家が開設してから
2回目のお正月を迎えることができました。
昨年の6月頃は、利用者さんが増えず
厳しい経営状態で腹をくくらなければ
ならないかもと不安な日々を過ごして
いましたが、なんとか持ち直すことが
できました。
昭ちゃん家という苫小牧になかった
タイプのデイサービス
(グループホームみたいとよく言われます)
を受け入れてくださった
利用者様、ご家族様、
そして関わっていただいたケアマネさん、
関係省庁、近隣の地域の皆さんの
ご支援のおかげだと思っております。
ありがとうございます。
今年はもっともっと精進して
利用者さんご家族さん、地域もそして
スタッフからも「いいね!」が
もらえるように、でも
ゆる~い感じの施設を
目指していきたいと思っております。
そんなことを書いていると
3年前に九州福岡の
宅老所よりあいに仲間2人と見学に
行った時のエピソードを
思い出しました。
利用者さんたちに交じって
スタッフの説明を受けていた時のこと、
まったく気が付かなかったのですが
一人の男性利用者さんが立ち上がって
外へ出たそうです。
その時、スタッフの一人が一緒に立って
「海がみたい」と言う利用者さんに
付き合い車で海へ行き『よりあいの森』という
『よりあい』が運営している小規模特養に
立ち寄って帰ってきたそうです。
私たちはそんなことはまったく知らすに
スタッフの説明を受けて、ひたすらに
よりあいの落ち着いた環境に感動し
まくっていました。
そして、持ってきた津軽三味線で
利用者さんたちと民謡を歌い終わるころに
ドライブから帰ってきて
はじめて、そこに徘徊
(この言葉はあまり好きじゃありませんが)
される方がいて、「そこに座っていて!」
という言葉もなく
スタッフが当然のように付き添い、
「海が見たい」という
言葉を受けて車を出したという
奥深~い『よりあい』のケア
を知らされました。
帰ってきた本人にスタッフが
「ドライブはどうでした?
海が好きなんですよね。」と尋ねると
「えっ、海?行ってませんよ。」という
答えが返ってきました。
運転してきたスタッフが
「え~!〇〇さんが海が見たいというから
車をだしたのに~!」と悔しがる。
その時、その方が
重度の認知症で短期記憶が
記銘できない方
なのだと知らされました。
今、行ってきたばかりなのに
海に行ったことも他の施設に
行ったことも憶えていない。
その方は見た目は普通の初老の方で
重度の認知症をもつ問題老人などには
全く見えず、
おだやかにそこにいらっしゃいました。
私が居た特養は回廊式の古いタイプの
100人以上を収容できる
大規模特養でしたので
徘徊される方はぐるぐる
行けども行けども
歩き続きます。
ある利用者さんは
「私の苗字はとても変わった苗字で
今まで私と同じ苗字の人に会ったことが
無いが、ここには僕と同じ苗字の人が5人もいる」
と驚かれていました。
そりゃそうですよね。
徘徊して5回も自分の居室を通って
いるのだから。
その前に居た同じ法人の特養は直線式の特養
だったので徘徊したら行き止まりが
あって、家へ帰りたいと思う人は
「開けて!助けて!
私、閉じ込められてるの!」
と大騒ぎになることもあります。
そこで回廊式特養を作って徘徊しても
良いようにしたんだと思いますが
結局、直線式も回廊式も徘徊を改善することには
ならず、認知症が重度化するだけの
「活かさず殺さず」の妥協的ケアになって
しまっている のかなと思いました。
大型施設では多くの死角があり、100名以上の
認知症の高齢者を安心安全に
少数のケアスタッフで
見守ることはとても難しいのです。
認知症高齢者は一人一人が
リスクのかたまりです。
当然、転倒骨折による事故が後を絶ちません。
そこで騒ごうものなら問題老人として
抗精神病薬かなんかを飲まされて
2週間ほど入院して
特養に戻ってきたときには、
よだれをたらして
静かにさせられているくらい
しか手はありません。
だから「そこに座っていて!」という言葉は
ケアスタッフの「怒り」というより「お願い又は
祈り」なんだと思います。
「お願いだから座って!」。
そんな環境の中で私は生活相談員をしていたので
『宅老所よりあい』のパーソン・センタード・ケア
(認知症をもつ人を一人の『人』として尊重し、
その人の視点や立場に立って理解し、
ケアを行おうとする認知症ケア)に
頭をぶち抜かれる思いがしました。
認知症高齢者が立ち上がったら、静止するのでは
なく一緒に立ち上がり寄り添うという
『寄り合い』のケアを見せつけられたとき
私が小規模デイをやろうと思った瞬間でした。
そして昭ちゃん家を『デイサービス昭ちゃん家』
ではなく
『宅老所昭ちゃん家』とした理由でした。
今年の課題は、7人程度の利用者さんで
やれていたケアを
10人以上の利用者さん相手にできるのか
ということだと思っています。
スタッフ一人一人の力量も問われて
きますが、
ケセラセラ!なるようになる
明日のことなどわからない!
ちゅうことで、今年もよろしく哀愁。
(昭和か?)
話はコロッと変わりますが
先月のクリスマス前にサンタの恰好を
して送迎に出てみました。
すると家族の皆さんびっくりされますが
そのあと
家族さんも利用者さんも
ほっこりします。
「サンタさんが迎えに来たよ」
と笑顔になります。
無表情で発語の無い方も
一瞬ニコリとされました。
ビックリです。
サンタクロースって
世界中の人を幸せにする力が
あるんだな~と思いました。
ご家族と本人の関係が悪く、
家に帰っても自分の部屋に
引き籠ってしまう方が
サンタの恰好をして送っていった
その次のお迎えの時には
本人はリビングに居て
家族との笑い声が聞こえ
家族からも優しい言葉を
かけてもらったと報告が
ありました。
サンタの恰好で家族関係を
修復できたかどうかは
わかりませんが、
少なくとも悪化させてはいなかった
と思います。
札幌の『認知症対応型デイいろどり』の
管理者・岡田さんが重度の認知症の方には
カラーセラピーが良いと話していました。
「一番効果があるのが黄色、または赤。
青には効果は見られない。
赤い口紅をして、重度の認知症の方と
話すとき、赤い口紅に注目されて
話を聞いてくれるのです。」と…。
考えればサンタクロースの服の色は赤です。
赤い服を着ると
認知症の方が興奮するので着るなと
いうのが介護の常識だと昭ちゃん家スタッフが
言っていましたが
しかし、岡田さんにカラーセラピーの
話をしてもらってから私は
赤や黄色、ピンクの服を着るように
なりましたがそのことで興奮する
認知症の方は今のところ
おられません。
だからこれからも管理者・宮下は
赤や黄色の服を着て
ケアしていこうと思いますが
けっしてただの派手好きのおっちゃんでは
ないことをここに
ご報告させていただきます。