むかしドライブ

先日、昭ちゃん家利用中のSさん

「街に買い物がある」と

出て行こうします。

なんとか出て行かない様に

好きな花札のお相手をするも

やはりSさん「買い物があるのに

何で止めるんだ」とおかんむり。

 

その時、

昭ちゃん家を立ち上げる前に

見学に行った福岡の

宅老所よりあいの

対応を思い出しました。

 

やはり外に出ようとした

利用者さんを止めずに

職員が管理者に

アイコンタクトで

「私が行ってきます」と

利用者さんについていき、

「どこに行きますか?」と

尋ね、「海」と言うと

職員は海まで利用者さんを

乗せてドライブしてきました。

 

帰ってくると

管理者が「車に乗って

どこに行ったんですか?」

と利用者さん聞くと

「知らん」と答えます。

ドライブに付き合った職員は

「えー、海に行きたいって

言ったから海に行ったのに!」

と絶句してました。

この利用者さんは

重度認知症で短期記憶が

無い方なんだと思います。

その後は何事もなく

よりあいは落ち着いた雰囲気

でした。

よりあいは利用者さん

気持ちに

寄り添います。

それぞれその方には

どうしてもここを

出たい理由が

あるのです。

 

職員が少ないとか

業務があるとか

職員の拘束する

理由は色々あるとは

まず一番に考えなければ

ならないのは、

外に出ようとする

理由を考える事だと

思います。

Sさんの場合、

難聴が大きな原因

だと思います。

レクで脳トレや

音楽をかけても

聴こえなければ

面白くありません。

なにをしてるのか

わかりません。

 

だとしたら

Sさんが面白いと思う

ことをしてあげる

ことが大切です。

それで、私は

よりあいのように

「街に行きたいなら

車を出しますよ」と話し、

社用車でドライブに

出かけます。

 

車の助手席に乗って

少し機嫌が良くなったSさん

「この道はM通りだべ。」

と話します。

「この先を曲がったら、

俺が住んでたT町だな」と

ニコニコ。

「じゃあT町に行きますか」と

大きく右に曲がります。

「おお、そうだそうだ。

あそこのでかいアパートが

俺の家だ」と嬉しそう。

「入ってみますか?

知ってる人に会えるかも」と

聞くと「いや、もう知らん人

ばかりだべ」

「この前がH町に居たんだ」と

言うので、言われるがまま

H町に向かいます。

「H町はいい飲み屋がいっぱい

あったんだ」とSさんは懐かしそうに

話し始めます。

しか今はH町に飲み屋は

ほとんどありません。

 

H町に着くと「もう全然

変わった。なんも無くなった。」

とちょっと寂しそう。

「もう少し行くと、N 餅店って

あってすごい人気が

あったんだぞ。すごく

うまいんだ」と言います。

 

「N 餅店は今もありますよ。

行ってみましょうか」

とN 餅店に向かいます。

運よく開店してたので

車を店の駐車場に

止めて中に入ると

Sさん

「昔よく来たんだ。

もうここのじーさん

居ないか?代替わりした

のかな?」と店番の

おばさんに尋ねます。

「私はパートなんで」

と笑顔でかわします。

 

「せっかくだから

利用者さんのおやつに

Sさんおすすめの

お餅を買っていきましょうか」

と豆餅と草餅とピンク色の餅を

購入して昭ちゃん家に帰りました。

 

よりあい作戦はみごと

的中しました。

Sさんは「街に出る」

と言わず、昭ちゃん家で

食事やレクを楽しんで頂き

ました。

 

宅老所よりあいは

もう30年以上の歴史がある

お泊りデイサービスで

グループホームの

モデルになった事業所です。

本も何冊か出していて

「98歳の妊娠」「おしっこの

放物線」「へろへろ」等

名著が多数あります。

昨年お亡くなりになった

詩人の谷川俊太郎さんも

歳をとったらよりあいで

暮らしたいと言い、

宅老所よりあいのために

素敵な詩を贈りました。

一部ですが

記載します。

 

ろこびにはなんの

ゆうもなく

すはちかくてとおい

きるだけさ しぬまでは

 

よりあい10周年の時に

谷川俊太郎が寄稿した詩です。

昭ちゃん家は今年6月で

7年目になります。

 

まだまだよりあいには

足元にも及びませんが

少しずつでも

よりあいの

利用者さんに寄り添う

取り組みに

近づきたいと

思います。

 

宅老所昭ちゃん家 宮下博己