認知症の瞳に恋してる。

 漫画家の弘兼憲司さんの『黄昏流星群』という作品の中で、ある女性が学生の頃、一途に思い続けた男性と

初老になってからめぐり逢い、めでたく結婚できた。

 しかしそんな幸せも束の間、男性が認知症になってしまうという哀しいストーリーがありました。

女性は掃除婦をしながら介護をすることになるのですが、その漫画の素敵なところは、認知症になり

短期記憶がなくなった男性が毎朝、その女性に恋をしてプロポーズするというところです。

 実際の介護の現場でそんな素敵な事はまず起こりませんが、何度も同じ話をする方は、沢山みてきました。

何度も同じ話をするじーさんと何度も同じ話をするばーさんがおしゃべりすると、どうなるのかな~と思っていましたが、

先日、その現場に出くわしました。その時は、自分のことを差し置いて何度も同じ話をするばーさんは

「このじーさんは、同じ話ばかりする!」と寝たふりをして会話になりませんでした。

私も長く生きていれば「同じ話ばかりする認知症のじーさん」と若い人たちに言われるようになるのでしょうが、

 この仕事をするようになってわかったことは、認知症になっても何もわからなくなるのではないということ。

ぼけても笑うこともできるし、冗談も言うし、泣くことも、怒ることもできるということ。

 そして、まわりの人たちがぼけを受け入れる心があれば、ぼけても笑顔で楽しく暮らすことができるということです。