2019/05/11
認知症が進行して、排泄の失敗があったり服の着方や脱ぎ方がわからなくなって
耳も遠くなってしまっても好きなことは忘れないものです。
農作業が子供のころから好きだったⅯさんは畑の畝の作り方がとても
上手でした。昨年は「畑はきらいじゃないんです。」と笑顔で話していました。
今年は冬の間にどんどん認知症の進行があり、畑の事も忘れてしまうのかなぁと
危惧していましたが、畑にお誘いすると、無表情だった顔が笑顔に染まり
「行きます。」と答え、1年ぶりに鍬を持ちました。
僕は農作業が苦手なので、「どうやって耕すんですか?」
と聞くと、鍬の鉄の部分を指して
「まず畑を耕す前にここの部分の2倍、土おこしをしなければなりません。
そして、掘り起こした根っこをしっかり取り除くんです。
じゃないと種を植えても1の草、2の草、3の草。。。が生えてきて種が育ちません。
畑にものを植えても常に除草するはめになるんです。」
「すごいですね。誰に教えてもらったんですか?」
と尋ねると
「これは、長年、畑を耕してきて会得したものです。
誰にも教えてもらっていません。」と哲学者のように静かに答えられ
Ⅿさんは黙々と土をいつくしむように耕していました。
子どものころに好きだった長期記憶は忘れることはないのですね。